header image

   ←AESオフィシャルサイト
今年も例年にもれなくAESショーが10月5日より5日間、アメリカ、Los Angelesで開催されました。AESとはAudio Engineering Societyの略称で、その名の通り、業界の人たちを対象に企画されているトレード・ショーです。また開催地もNewYork とLos Angelesを1年ごとに交代して行われ、東海岸、西海岸、どちらに近く住んでいてもフェアーであるように考慮されています。昨年は9月11日のテロ事件の影響でNew Yorkのショーに参加する人が大変少なかったため、今年はその反動で参加者が増えるか!と期待を膨らまし、早速ロスに旅立つことにしました。
It never rains in Sourthern Califronia...という歌にあるとおり、3日間、雲ひとつ無い青空が広がる中、ダウンタウンと呼ばれる中心街にあるLos Angeles Convention Centerを訪れました。まずはRegistratrion。初日ということもあり、結構人が並んでいます。AESは登録をするだけで無料で参加できるのでありがたい。ショーによっては1人$40-50もとられる所があるので実に良心的。さあ、バッジをもらって胸に着けて、エスカレーターを上り、ショーフロアーに突入!
うん?ちょっとまず驚いたのがショーのサイズでした。あまりにも小さくなっている!!NAMMショーさえもゆとりで催すことのできるこのコンベンション・センターの2Fフロアーのみ、しかしそれも全フロアーを使っておらず、業界の景気の悪さを象徴しているようでもありました。これでトレンドが明確になってきたようです。アメリカ、日本、ヨーロッパで開催されるトレードショーはどれも皆一様に縮小、縮小の一途をたどっているのです。その代わりに、今や、新しいトレンドが確立しつつあります。それが中国のショーです。業界が落ち込もうが何だろうが、中国で開催されるショーは例年どんどん大きくなり、各国のメーカーからも大きな注目を集め始めました。AESが小さくなった分、翌週から香港で開催されるElectronic Showはどれだけ巨大になっていくのだろうかと、ふと考えてしまいました。
会場の左側にある特設ステージでは、ショーの開催期間中、何組ものバンドが、様々なパフォーマンスを繰り広げていました。見学に疲れた人たちが、ここで一息ついては、再び商談に向かったりといった具合でした。演奏している彼らも、将来はビックバンドになるかもしれません。
コメントはこのくらいに控えて早速フロアーの感触をつかもう!まず、唯一大勢の人が常に群がっていたブースがここ、Digidesign。その、業界を牽引するリーダーシップの強さを感じずにははいられません。Cakewalkのブースはがらがら、SteinbergのNuendoのデモもさっぱり人気なし。勿論、Appleに買収されたLOGICなどはブースのかけらも見当たらない(見逃していたらごめんなさい)。盛者必衰といえども、いつまでこのDigiの一人勝ちが続くのかな、なんて考えずに、プロは迷わずDigiしかない。
その真向かいのM AudioブースはDigiパワーに圧倒されていたせいか、さっぱり元気が無くみえてしまいました。でもこのところM Audioの評価は高いので、もう少し盛り上がってもよかったのですが…
そのDigiの強さを見込んで、ApogeeはPro Tools対応のNative Toolsを展示。24/96コンバージョンの機材一般が各メーカーより販売されるようになって、価格も下がってきた昨今、16チャンネルのマルチチャンネル・コンバーターやAMBUS対応のFire Wire、IEEE1394カードなどトップレベルのハードを提供してきたApogeeの今後に興味が湧いてきます。
WAVESのブースでは新製品として360度サラウンド・ツールTDMが大々的に展示されていました。ひときわ目に付くのが、多数の小型スピーカーに上から囲まれた状態でリスニングする製作スペース。かっこいい!のは勿論、中身も充実している。サラウンドのミキシングをより快適に視聴覚のセンスを活かして実行するため、スクリーン上の円形のスポットに表示されるシェープを見ながら優れたローカライゼーション及びエンベロープのスペーシャライゼーションを達成するために編集するわけです。このツールでは360度のローテーション、ディスタンス・パニング、リバーブレーション、リンクド・ダイナミックス、カリブレーション、及びミックスダウンが手際よくできます。
APEX社からはリアルタイム・システム・オプティマイザーが展示されていました。既にDBX社から出されているDriverackPA等からもわかるとおり、これからのトレンドは如何にして良い音をより「簡単」に作るかです。すなわちインターフェースがシンプルでわかりやすく、疲れることなく快適に製作ができることが一番の決め手となります。IntelliQもその方向性を模索した結果生まれた製品であり、内容を見ると、30バンド・リアルタイム・グラフィックEQ、10バンド・パラメトリックEQ、バリアブル・ハイ/ローパス・フィルター、デュアル・コンプレッサー、出力ディレイなどを満載し、ソフトウェアを使ってEQカーブ等をできるだけビジュアルに補正できるように工夫してあります。

紫色をトレードマークにし、本格的なレコーディング用メディアで有名なHHB社がPORTADRIVEを出展しました。24ビット、8チャンネル、96kHzの仕様をベースとしたレコーダーです。基本は8CHのハードディスクレコーダー、AES31 ADLとPRO TOOLS V5フォーマットを採用しているため製作もシンプルにまとめることができます。8チャンネルで2時間、4チャンネルで9時間の非圧縮録音が可能で、6X2デジタルミキサー、6系統のマイクプリの品質もかなりgood!出力端子も豊富で、8AES入出力、1SPDIF入出力を持ちます。またM/S録音も可能で、8CHのレベルメータが大変見やすいと評判。スレートマイクとトーンジェネレーターも搭載しヘッドフォンのモニターも大変便利にできるように工夫されています。その他、多種多様の機能を満載したPORTADRIVEは、もしかしたら人気作となる可能性を秘めています。確かにデザイン、使い勝手は一見して良さそうです!
DAT、CDR、MiniDisk、MO、adatといったおなじみのメディアに加え、新製品のDVD RAM、DVD+RW、DVD-R、DVD-RWがずっしりディスプレイされていました。今後も、次々と新たな規格が生まれてくるのでしょうね。

アナログミキサーで有名なALLEN&HEATHのブース。目新しさは無いものの、大型ミキサーを5台展示し、圧倒的な存在感を示していました。
入り口を抜け、最前列の中心という一番好位置に陣取っていたYAMAHA。やはり、ブースも大きく人も絶えることなく混み合ってました。その中でも、ひときわ賑わっていたのが、デジタルミキシングコンソールDM2000。また、こちらの周辺では次から次へと問答が繰り返されていました。
ミキサー、デッキ類など様々な商品を配置したタスカム。派手さは無いが安心感があります。ある意味一番商品に触れやすいブースでした。
さてお馴染みのRODEからまた新製品の登場。世界のトップセラー、NT1が進化してNT1-Aがデビュー。アウトルックはNT1とほぼ同じ。但しSHELLはつや消しニッケルメッキの銀色が美しいメタルワーク。構造的には内部のボードがすべてサーフェスマウントとなり耐久性も相変わらず良さそうです。そして圧巻なのはノイズレベルが更に下がったこと。RODEのNT1000は現存のコンデンサーマイクの中では最低のノイズレベルを誇る超優秀作ですが、それを更に上回る低ノイズを実現したのがNT1-A。入荷が待ち遠しいですね。
Audix社も負けじと、D6バスドラム用専用マイクを発表。シルバー色、黒の2色があり、既存のD4よりも一回り大きくできている。D4との違いは、と聞くと、マネージャーの方がこう答えられました。「D4は素晴らしいマイクだが、指向性がハイパーカーディオイドであるため、セッティングが難しく、ちょっとしたマイキングの位置の変更で音が微妙にかわってしまう。そのため本当にプロ向きのマイクなのです。ライブの現場ではもっと簡単にセッティングができるように単一指向性のマイクで尚且つD4と同等のクオリティーを持つマイクが必要、と感じ、新たに開発しました。素晴らしいですよ!」
Audio-Tecnicaのブース。新しいワイヤレスマイク(200,3000シリーズ)を中心に展示。他のマイクメーカ各社もワイヤレスマイクを大きくPR。各社の力の入れ具合が伺えます。インナーイヤーモニターも含めて益々競争激化。各メーカーの今後に期待!
マイクズラリ、大御所のSHURE。最前列中央の好位置もあってか、常に混み合っていました。4時前には、シャンパン・ワインを振る舞いサービス満点。スタッフからも余裕が伺えました。
小型マイクで有名なCOUNTRYMANです。左のポスターは超小型のB6。見てくださいこのサイズ。その小ささは、指と比べると一目瞭然。この先どこまで小さくなるのでしょうか?

こちらは、生楽器の音をどう拾うのか追求したマイクメーカAMTのブースです。サックスやバイオリン・ハーモニカなどが飾られていました。
Earthworksは大変優秀な収録用マイクをデザインするメーカーとして、その評価はうなぎのぼり。今回のAESでもマイクメーカーとしてはスペースを充分にとって各種マイクを展示。展示品の中にはマイクだけでなく、いつの間にか高級マイクプリや、スタジオモニターも含まれていました。価格をみてびっくり。マイクプリ1022はサブタイトルがゼロ・ディストーション技術プリアンプ、ということで、ステレオが20万円以上!モニターもこだわりを追求し、マッチド・ペアーの定価$3333、ということで、あわせて凄い!しかしながら価格に見合うべくTIME Coherentを実現したと唱っており、評判もすこぶる良いようです。
その他、BLUEのブースも青色が鮮やかで目立っていました。最近、評価が大変高くなってきていると海外でも評判の高級マイクメーカーです。2万円以下の商品が多くなった今、キャラクターのある商品が登場してくるのは嬉しい限りです。
ショーに参加する一番大きな楽しみは新製品や変わった商品との出会い。今回はブラジルでマイク用のサスペンションを作っているSABRA社を発見。構造は至って簡単で、サスペンション用のリングホルダーに数本の太いゴムをかまし、そのゴムをよってマイクをはさむ、という使い方。SABRAの良い点は一つのショックマウント・ホルダーで複数の異なるサイズのマイクを使用することができること、そして、2本、4本、8本用と多種多様なオプションがあるだけでなく、角度を自由に可変できるところ。この美しいルックスでショックマウントが5,000円、ダブルホルダーが3,000円、クアッド(4本用)ホルダーが5,000円なら、購入したい人も多いのでは?年内入荷予定です。
dbx、JBLと共にHARMANグループに属するCROWN、パワーアンプマイク類が主力商品。右側にいる男性がマイク担当らしく、通りかかる人にガンガン積極的にPR。見習いたいです。
今、DBXのイコライザーが熱い!ベストセラーとなった20シリーズの次に登場したのが2シリーズ。一見そこらの安いグライコと変わらないルックスですがそこはDBX、差別化はバッチリというところでしょうか。入力ゲインは安いフェーダーではなく、トリムを搭載。そして出力レベルは4段のLED採用。またローカット、バイパス、レンジも見やすいスイッチを採用し、視認性は抜群。他メーカーとは一線を画しただけでなく、価格といえば、超ローコストを実現した。日本上陸間近ということで、期待したい商品です。
次はロスアンジェルスの郊外、それも自宅のガレージで生産しているADesigns社のMP2、真空管ステレオ・マイクプリ。Jensen製の入力段トランスを搭載し、高級機に匹敵するスペックと音色を提供しながら、価格は10万円台におさえた、ちょっとした快作です。レトロな感じのフェースもVUメーターが際立った感じで心地よく、ちょっとサウンドハウスでも扱ってみたくなってしまいました。ちなみにメーカーの社長は是非代理店に…と言っているのだがはて、結果は如何に…


真空管といえばSummit Audioが著名。このたび、大半のモデルを大幅に値下げして、ますます買い得感が増してきたので要注目の筆頭にあがるメーカーの一つです。そのSummitが2BA-221というハーフラックのマイク・ライン・モジュールをリリースした。既に紹介されているTLA50、ハーフラックのコンプレッサーや、TD100のダイレクト・ボックスと一緒に専用ラックマウント・シャシーに取り付ければ、1Uに2つの機材をきれいに収納することができ、使い勝手も大変良いとみました。「これがすごくいいんですよ」と自慢げにラックマウントされた機材を手にしているのは、Summit Audio創始者のご子息であるPapp氏。
プリアンプ、コンプレッサー/リベートーで有名なAVALON。赤いネオンが印象的。でも一番は、この金髪の女性。SALES担当でオーバーアクション、ハイトーン。動画・音声を伝えられないのが残念です。
自宅にポータブルの防音ルームはどうですか?とWHISPER ROOM社が提供するのが木製の簡易防音スタジオ。サイズも1mX0.7mから2.2mX3.8mまで19種類も豊富にラインアップ。簡単に言えば、合板にカーペットを巻きつけて壁、天井とし、それを組み立てて部屋にして、中は吸音材をふんだんに使っている、という印象でした。ドアをガチ、としめるとどれだけ音が漏れるかな…と思って中に入ってみると、確かにポータブルの木製ルームらしく、漏れるは漏れる、あれ?!とか思ってしまったが30万円以下で購入できる防音ルームにそこまで期待してはいけないのかもしれない。
おっと、これはMackie?違う。Alesisのミキサーでした。今ごろこんなミキサー出してもはっきり言って誰も興味を示さないのにと、つい思ってしまう。触ってみると明らかに低レベルな作り。スイッチ類もスムースではなく、つまみもちょっとガタがあり、明らかに委託生産にちょっとかっこをつけただけのもの。もっと面白い商品はないのだろうか?Alesis社の往年の定番EQ、230がフェースを代えて展示してありました。フェ-ダーのノブが小さく、見かけがすっきりしていることで以前から人気がありましたが、さて、今後どうなるか。
お、ここはお馴染みETA社の電源モジュール。今回のAESショーでも電源モジュールに特化して展示している唯一のメーカーとして目立っていました。写真は背後からのものですが、電源のクリーンアップに関する需要が増えている昨今、これからも安くて良い商品をどしどしと投入してほしいものです。
コネクター類で抜群の安定性を誇るノイトリックのブース。定番のものからカラフルで多種多用な商品が展示されていました。どんなにテクノロジーが進化しても、コネクターとケーブルは、最も重要なアイテムの一つである事に変わりはありません。世の中には様々なコネクターがあります。様々な変換プラグやケーブルも必要になるものです。
ご存知のHOSA。プラグからケーブル類までブース一杯に陳列。それにしてもこのバリエーションは、さすが。赤一色です。
さぁ、ここで一息。ホットドックの売店前にこんな置物が。人の背ぐらいはありました。あまり美味しそうには見えませんが…。
ページの上へ


海外展示会レポート一覧へ