速報!! 中国CALM 展示会 2001
  -China International Exhibition of Pro Audio, Light , Music and Technology. 2001-
 中国と言えば今や話題の尽きないお国!ユニクロも中国工場が飛躍の原点。日本の食品も野菜を始め日増しに中国からの輸入量が膨大になりつつある昨今、音響業界も例外ではない。世界中のメーカーが生産コストを下げるためになんとかして中国の工場と提携しようと日夜飛びまわっている話を耳にするにつけ、これからは中国の時代と言っても過言ではない。その中国の首都、北京で毎年行われている北京音響展示会ショーが5月17日から20日まで北京展示場にて開催された。早速JAL便に飛び乗って北京(ベイジン)にLet's Go! 


 北京国際空港に着くと何とそこは真夏の暑さ!5月中旬だというのに、摂氏36度の猛暑!うっそー!ここは砂漠地帯なのか!?

 とにかく北京はどこもかしこも人、人、人、そして建設ラッシュだ。町並みを眺めているだけで大国の底力を感じ、脅威的にさえ思ってしまう。ホテルから20分、タクシーを飛ばしてたどり着いた会場の周辺は、何とここも工事中!この土ぼこり、この雑踏、車と自転車、人間とトラクターまでが入り混じるこの光景は一体全体何なのだ?!
 そこには究極の大国革命があった。
 そして驚嘆したのは会場前の地下道路工事。何キロも及ぶ巨大な溝が会場前を突っ走っており、会場の反対側にタクシーで下ろされたサウンドハウス・チームは空を飛ぶことも出来ずに途方に暮れてしまった。
 不機嫌そうな警察官に「あっちに行きたい」とジェスチャーしたら、この工事現場をぐるっと回れといわんばかりに遠くを指差される始末。
 会場前でタクシーを降りたのに埃道をずっと何百メートルも歩かされるとは思っても見なかった…。これが中国だ…。
 さて工事の溝堀をぐるっと回ってたどり着いたところは広々とした会場。車もごちゃごちゃしているし、人も一杯だし、これはもしかしたらすごいショーかもしれないと、ついつい心がはずんでしまう。
 早速会場内に突入だ。
 まず目に付くのが…やはり人の波。どちらかと言うと音響機器ショーというより、東南アジアの雑貨市を思わせるような雰囲気がフロアー全体に漂っている。
そしてピアノを見てもギターを見ても、聞いたこともないようなブランドがずらっと並んでいる。ここはまさに楽器の市場なのだ。良きにつけ悪しきにつけブランドを問わず、モノとプライスで勝負する商人(あきんど)が伝導したとも言える。その商売っ気に圧倒されてしまいそうだ。
 無論Steinwayのような著名ブランドのブースもあるのだがイマイチぱっとしない。何故か無名ブースの方に人が多いのが最初は不思議だった。
 ブランド品は高いので人が寄りつかないという単純な方程式なのだろうか?それともノン・ブランドの激安品が流行りで、ファンが多いのだろうか?
 でも出所は案外一緒だったりして…
 おや、ここにベリンガーがあった!
 と思ったのもつかの間、CHARIOというブランドでした。でも顔も同じだし、やはりベリンガーが造られている中国工場から違うブランド名であちらこちらで販売されているらしい。ということはやはり、これからはブランド名にこだわるよりも、どの工場で作られているかにこだわる時代の到来かもしれない。
 ベリンガーはこの会場では1台も見かけることは無かった。中国での存在価値が無いからかもしれない。何故なら中国では複数の無名メーカーが別ブランド名で同等の商品を強烈な価格で販売しており、競合することさえ出来ないからだ。
 とすると考えようによってはベリンガーなるもの、中国工場の世界版とも言えなくはない。今後の展開が面白くなるはずである。

 中央の広場に入っていくとドラムが2階にずらっと並んでおり、客は好き勝手に思いっきり叩きまくっている。それだけではない。1階ではこれまた大音量でPAをしているのだ。おかげでどこに言っても耳が痛いほど、音の嵐にみまわれてしまうのもこのショーの特徴なのだ。
 おっと、General Music社が登場。
 サウンドハウスが今、自信をもってイチオシする、  REAL PIANOと呼ばれるデジタルピアノを率いるGEMブランドに要注目。KEITH EMERSONも愛用しているPRO2は勿論、今回日本で販売開始するPRO1pRP7等も展示されていた。



 キーボードといえばYAMAHAROLANDKORGがあくまで主流ではあるが、実を言うとこのGENERAL MUSIC、ヨーロッパ最大のピアノメーカーとして多くのファンがいる。勿論多数のプロユーザーも絶賛しており、さすがイタリアのトップブランド、いや世界のトップブランドと呼ぶにふさわしい!

 それにしても何でMACKIEのような著名ブランドのブースには誰も来ないのだろう?中国はノン・ブランド商品のメッカなのか?なんだか淋しいなあ。
 マイクメーカーのAUDIXCREST AUDIOも入り口そばにきれいなブースを持っていたが、ここもなんだか淋しい。
 やはり中国はノン・ブランド品崇拝らしいと確信せざるを得ない。
 会場内にはおそらく100ブランドは下らないと思われる多数の無名スピーカーメーカーでいっぱいだ。パワーアンプにしても然り。訳のわからないごちゃごちゃしたブランドばかり見ると気がめいってしまいそうになる。スピーカーメーカーでALESを見たときはギョッとした。ロゴの形がALESISとそっくりだったからだ。
 
 どこもかしこもいんちきか??
 よくもまあ、こんなにいろんな形の色々な無名ブランドのスピーカーがショーで陳列されるもんだと、違った意味で感心してしまうくらいだ。それでも国が大きいということは需要がそれなりにあるのだから、少なくとも暫くは共存出来るのだろう...国が大きいというのはいいことだ!
 ここにもSoundcraftがあった。と言うより、明らかにサウンドクラフトもどきである。それにしても見ても触っても実に良く似ている。カラーリングといい、タッチといい、見事なコピー商品だ。他にもSOUND SCIENCESOUND MAKESOUND SCENEなど、サウンドクラフトをもじったコピー商品を販売しているブースを幾つも見つけた。それがごく普通にまかり通るのがすごい!!
 そんな時、やっとPEAVEYSPIRITのブースを見つけた。ホット一息。

 このPEAVEYのブースでは、この会場では最高と思われる見事な音造りをしていた。値段の安いPEAVEYは中国でも結構通用するらしい。



 この展示会で本当にまともなシステムを組んでいた数少ない一例がここだ。
 新型GPSパワーアンプをスタックし、Disneylandでも使われているMedia Matrixシステムを搭載した音響システムで、PC画面上において全てのシステムツールの統合が可能になる。またコンサート仕様のQ-Factorスピーカーもとてもバランス良く大音量を出していた。
 PEAVEYの真横にはSPIRITのブースがあった。かなり広いブースだがやはりここもブースが大きい割に人が少ない。本当に有名メーカーのブースは気味が悪いほど静かだなぁ…



 が、何かがおかしい。
   なんと、SPIRITがコンサート用のスピーカーを発表しているではないか!見よ、このスピーカーの大群を!!その横には超カッコ良く見えるパワーアンプがずらり!

 またおなじみのミキサーも陳列してあり、やはり凄いと思いつつふと目に入ったのは、ワイアレスマイクと旧世代のポンコツ・パワードミキサー…

「もしかしてこれら、まがい物?!」

 何と、ナント、このSPIRITのブースは中国製偽SPIRITブランドだったのだ!!ショック!
 だって、ロゴもついているじゃん!?
 そこでロゴを良く診てみることに。左が中国SPIRIT、右側が本物。殆ど同じで中の棒が3本か2本か(内1本横向き)の違いだけ。これでは誰でも騙されてしまうのは無理もない。
 ああ、なんという時代なのだろう。
 あまりがっくりしてもしょうがない。気分一新!

 お!お!ここでもチャイニーズの美女が踊っている。勿論、周りは男性でびっしりの熱気でムンムンだ。


 ハイスピードのロックンロールを巨大音量でぶっ放す大音響システムをバックに、熱いダンスを繰り広げる彼女らに見入る男性諸君は、一体何の為にこのショーにやってきているのだろう?


 その真横には巨大なスピーカーがどかっと置いてあり、何だか大砲が置いてあるような気分。ちょっと様にならない気もするが、まあいいや!
 すぐそばのステージでは結構有名人らしいキーボード・パフォーマーが熱演を繰り広げて観衆の喝采を浴びていた。

 またレーザーショーも小規模ながらあちこちで見ることができる。品種は少なくベーシックなものが多いのだが、そのかわり値段が大変安く設定されている。
 SHUREのブースでは親切なことに米国から来られたスタッフがSHUREの全カートリッジの音を聞き比べるパフォーマンスを行なっていた。1カートリッジ1分程度で次から次へとカートリッジを替えていくのだが、音の違い、音の好みが自分でもはっきりと判ったのが嬉しかった。
 我らの新ブランド、PHONICのブースも登場。
 今や世界各地でYAMAHABEHRINGERと同等に競合するに至った強力ブランドではあるが、台湾に本社を持つメーカーということもあり、やはり中国ではパっとしないのだろうか、人が少ない。
 いや、これが中国における一流ブランドの証なのだろう。
 サウンドハウスが自信を持って推奨するフォグマシンのトップメーカー、ANTARIも各種新商品を展示していた。日本では販売価格が以前の1/3になったということで、今後フォグマシンや各種ステージ・エフェクトの需要は一挙に高まると考えたい。
 通路を歩いていると突然ドでかいサブウーハーの強烈なインパクト音と共に髪の毛がふわっと浮いてしまうほどの風圧を体全体で感じた。これはかなり心地好い凄いサブの音だ。中途半端なコピー商品が出せるものではない、とブランド名を見て納得。EAWがずらっと並べてあるではないか!やはり良いものは良い。EAWMeyerもコンサートの頂点を行く素晴らしいスピーカーを作っているのだと、感激もひとしお。

 

 また最近のDJブームにのって、あらゆるショーで大活躍しているのがCerwinVegaだ。そのサブウーハーの底力は例え値段は安くても本物。これからも要注目のスピーカーメーカーである。
 DBXもブースを大きく持っていた。ここはむしろ本国からの担当者が大勢来ており、ちょとまた変わった雰囲気をかもし出していた。ハーマン・グループの率いるDBXAKGCrown、そして本物のSoundcraftは今後もグループ力を背景に進展していくことに違いない。
 というわけでぐるっと一回りして感じること、それは我々は大きなパラダイム・シフトの時代に生きているということである。中国という大国の労働力を活かしてコストダウンを図ろうと世界中のメーカーがこぞって進出する中で、無数のメーカーが乱立してしまっているのが現状だ。そしてこれら無名メーカーの大半は淘汰されていきながら、最終的には少数の巨大工場が残り、生き残った競争力のあるブランドに対してこれらの工場から商品のOEM供給がなされていくのだと思う。これは何を意味するのか。

 今までのようにブランドにこだわった時代は終焉を迎えつつあるということだ。メーカーはコストダウンを優先する。どこで作られようと安ければ安いほうが良いのである。それを追求していくうちに競合他社ともどもたどり着くのは中国工場であり、商品のクオリティーがほぼ同等になってくる現象が顕著になる。

 考えたらちょっと淋しい気もするが、時代の流れを変えることはできないのだ。このトレンドをしっかり踏まえた上で、より良い商品をより安く、より信頼のおけるルートで購入することが今後のカギとなる。

 さてさて、そんなことを考えていては北京ダックが不味くなる!さあ、チンタオ・ビールで真夏の(まだ5月だが)乾杯だ!

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