AES速報 in Los Angels

The 109th Convention of the Audio Engineering Society -Los Angels-

2000年9月22日から25日までAESショーがアメリカのロスアンジェルスのコンベンション・センターで開かれた。

 AES公式サイト:http://www.aes.org

今回は109回目、Audio Engineering Societyが主催するショーだけあって規模も大きく、世界各地で開かれるAESショーの中ではNew Yorkに次いで2番目の規模を誇る。今年も楽しみである。

まず、この長いブースの前に並んでレジストレーション。
基本的にAESは業界のショーということもあり、誰もが自由に出入りできるというものではないようだ。
しかし1枚の用紙に自分のデータを書きこむだけなので、その手間さえ惜しまなければAESを楽しむことができるのもまた事実だ。
中に入ってすぐに目に付いたのが、Rolandのギター関連のブース。Line6を追っかけるかのごとくVGA7というモデリング・アンプを搭載したギターアンプを使って、1日中写真のお兄さんが次から次へと色々なギタリストの音真似を繰り広げていた。
ギタリストはどうしてもイメージを大事にするところがあるし、また有名ギタリストの使っているギターアンプを使ってみたいという傾向は昔から変わらないので、ギターアンプメーカーとしてのイメージがあまりないRoland社がどこまでこの市場にこれから食いこんで行けるか見ものである。
不屈の精神を必要とするだろう。
そのブースの横にはRolandのスタジオがあった。
スタジオ中がR社の製品で埋め尽くされている光景はこのようなショーならではの体験だが、内容は充実。
VSR880が3台、VS1880、 VE7000、 VM7200、そして最新デジタルEQのSRQ2031イコライザーをスタックしたシステムだ。
それが専用のマルチデスク・システムにすっぽり入っているために、スペースを出来る限り有効に使った小型スタジオが実現している。

dbxのブースにも大勢の人だかりだ。人気の高いメーカーのブースは一目瞭然といったところか。
特に最近発売されたPA用オール・イン・ワン・システムDRIVERACKや376ステレオ・真空管マイクプリアンプに注目だ。


既に人気の高い386マイク・プリアンプの兄弟版ともいえる376は、デジタル出力付のチャンネル・ストリップ型真空管マイクプリで楽器用入力端子を始めとし、ミッドスィープ付の3バンドEQ、コンプレッサー、ディエッサーが標準装備されている。
その他ディザーやノイズシェープ機能も付いていて超低価格を実現。
今後が楽しみである。
この写真に登場したのはdbx社の副社長であるバトライナー氏。
そのテーブル上にあるのが発表間近(ここでは秘密の登場です)の小型DRIVERACKシステムだ。1Uの機材の中に3バンド・グラフィックEQ、9バンド・パライコ、各種クロスオーバー、PC用インターフェース、コンプ/リミッター、ポスト・ディレイがついていてデビューは12月とか。そして日本での市場価格も10万円を切るということらしい。
早く来い来い…DRIVERACK。

次はSUMMIT AUDIOのブースを拝見。
真空管プロセッサーの老舗としてTube Techと人気を2分するSA社である。
1985年、990という今日でも著名なオペアンプを真空管と一緒に搭載することによって、新旧の技術をうまく組み合わせることに成功。
990オペアンプのきれいな音と真空管の暖かさのブレンドが世界の著名スタジオに導入された秘訣だ。
SA社に負けじと英国FOCUSRITE社もすぐそばにブースを持ち、各プロセッサーの展示をしていた。
特にF社は新製品をここ最近続々と登場させており、そのどれもが市場で高い評価を得ているので、今後の動向から目が離せない。
またPROTOOLSで有名なDIGIDESIGN社のブースはとにかく人だかりが多いので有名。
このAESでも商品デモを中心に多くの人たちが熱心に最新PROTOOLS状況に聞き入っていた。

ちょっと趣を変えて、アコースティック吸音パネルに目を留めてみよう。

最高の音造りに欠かせないのがこれらの吸音材だ。
このAcoustic Firstのブースでは各種吸音材が展示されており、ポリウレタン製のスポンジ系壁材からメラミン仕様のタイル、グラスファイバー製の内装材、そして各種バッフル材、アコースティック・パネル等、ほぼ何でもそろう。価格の下落によって今後普及が進むと思われる。
ここに登場したのはPARAGON社のミキサー。とにかくそのつまみの多さには度肝を抜かれてしまう。
ここ最近のデジタル・ミキサーの普及により、小型ミキサーに段々慣れてきてしまっている面もあるのだろうか、ちょっと異様にも見えてしまう。

この何百、いや何千のつまみとボタンにハマる人はハマるのだろう。

さあ、おなじみHOSAのブースに来た。おっと、ここでは新製品3兄弟が登場。向かって左から、音が格別良いということでHOSA社長自慢のDIボックス、真中がXLRフォン、ピン、スピコン等あらゆるケーブルの配線状況をピン番号までチェックできる最新型ケーブルチェッカー。これだけ端子があって各種ボタンがありながら予定価格8,000円ということだから、きっと「誰もが1台」となるに違いない。向かって右は切替つまみ付のラインセレクターだ。これらの便利グッズはクオリティーがどんどん上がりながら販売価格が下がってくるので嬉しい限りだね。
Empirical Lab社のDistressorを
聴いたことがあるだろうか。
ここ最近にわかに人気急上昇中の
ハイエンド・コンプレッサーだ。
またUREIi社1176LNの復刻版ということで
注目を浴びている
UNIVERSAL AUDIO社の商品からも目が離せない。
新旧の統合というのがこれからの
メイン・コンセプトなのかもしれない。

JBLも今年から新製品を市場に続々とつぎ込んでくるようだ。
特にハイエンドのPA用スピーカーとdbx社のDRIVERACKデジタル・オールイン・ワンPAプロセッサーのコンビネーションはなかなか凄そうだ。
その他STUDER、AMEK、TEAC、AUDIO TECHNICA社等、歩き回りながら見ているだけでも楽しい商品がずらりと並んでいる。
奇抜なデザインあり大昔の復刻版あり何でもアリで、そんなところがワクワクしてくる理由の1つでもある。

PEAVEY社に買収されてから暫くの間、鳴りをひそめていたパワーアンプのトップメーカーCREST AUDIO社だが、このAESショーで幾つかの新製品を展示していた。
デザイン良し音良し、あとは価格が安くて耐久性が良ければ文句無しである。
QSC社も各種パワーアンプを展示していたが、その著名なPLシリーズに使われている最先端技術にはあらゆるアンプメーカーの注目が集まっている。
この写真のようにAIRフロー1つをとってもヒートシンクの考え方に独自の発想が伺え、大変興味深い。
小型コンデンサー・カプセルマイクとDIボックスで有名なのが、COUNTRYMAN。何しろ直径2〜3mmの米粒よりも小さいマイクを開発し、このB6がそれでも音が良いというのは驚きだ。

舞台で活躍できることは間違いないだろう。
展示会には必ず出展しているコネクターの王様メーカー、ノイトリック。
あらゆるケーブル用コネクターを造っており、またスピコンなどの新製品の開発にも熱心なところがとても評価できる。
ここはおなじみMACKIE社のブース。

次から次へと他社を買収して事業を拡大中とのことで、かなり忙しそうな雰囲気をいつも持っているM社。32・8HDR24/96 24ビット96kHzのハードディスク・レコーディング・システムの普及に全力を上げているようだ。

本業のミキサーでも頑張ってほしいところだ。
EGOSYSは低価格バージョンのオーディオ・インターフェースを提供するメーカーとして注目を浴びている。
日本での人気も上がってきており、今後の新製品、カスタマーサポートの展開に期待したい。

音造りは、発想の自由さから最大のインパクトを実現できる可能性を引き出すことが出来る。ここにあるようにトラックで移動できる音響システム等、日本では考えづらいがアメリカではごく普通にあちこちで活躍しているようだ。移動スタジオ、PA、果てはモービルDJまで、どこでも誰でも最高の音造りをより簡単に実現することを誰もが目標としている。

シーケンスソフトの雄、Steinberg社のブースはいつも賑わっている。それもそのはず、いつのまにか世界のトップレベルの技術を持ちながら、ユーザーフレンドリーなソフトを次から次へと市場へ導入してきたわけである。今年の人気はSteinbergとMOTU、及びLOGIC社の争いとなっているが、他社製品とのコンパチビリティーをみる限り、Steinbergにまだ分があるようだ。
スタジオモニターで人気の高いKRK。
オーナーが変わったといううわさが一時流れて今後の動向が心配されたが、無事AESに出展しており、一安心。
HHBは面白いメーカーだ。
初めはメディアにはまっているメーカーかと思いきや、次々に新製品を導入し、CDライターを初めとしてモニタースピーカー、シグナル・プロセッサー等各種機材を市場に紹介している。
ALESIS社にやっと元気がついてきたようだ。
290で一世を風靡したのは何年も前のこと。
暫く沈黙を守っていたが9600を発表してプロユーザーから絶賛を浴び、本年度以降新たなる製品を次々と紹介してくるようだ。

右の写真にあるのはKORGのKAOSS PADのように指でなでながら音造りをする画期的な作品。

SR用スピーカー、パワーアンプ、ミキサーのメーカーにとってトップクラスの実力を誇るのがPEAVEY社。そのコストパフォーマンスの良さには他のメーカーも圧倒されることが多く、このAESではプログラム入力1000WというImpulse1000 SR用スピーカーが紹介された。軽くて丈夫で、野外でもガンガン音が飛ぶスピーカーを目指しているそうだ。
コンデンサーマイクの決定版とも言えるRODE社のブース。
NT3の導入で、3本柱が足並みをそろえたところ。
この勢いは留まるところを知らない。
そしてNT4が登場するのはいつの日だろうか、と考えているうちにきっとまたすぐ紹介されるに違いない。

EVENT社のブースではパワード・モニター・スピーカーの新シリーズ、PSシリーズが紹介されていた。
ヒット作20/20Basに続いてどれだけ市場に受け入れられるか注目だ。
そして最大の目玉はEZBus。
ここ最近デジタル・インターフェースが注目されているが、その中でも一番の注目に値する。
コンピューター・オーディオ・レコーディング・インターフェース、DTMソフト用コントローラー、そしてデジタル・ミキサーとしての3つの機能を備え、Cubase、Logic、Cakewalk等のソフトを簡単にボタンとフェーダーで操作できるだけでなく、PC用のインターフェースとして24ビット/96kHzのコンバーターを含めてあらゆる入出力のマトリックス操作が可能。
そして単体のデジタル・ミキサーとしての機能にも優れているということで大ヒットは間違いないだろう。12月頃発売予定だ

エフェクターの老舗、トップメーカーのLEXICONが満を持して販売開始したCORE2。その驚異的低価格とハイスペックを誇るオーディオ・カードは誰もが満足するに違いない。
サラウンド機能を持つマルチチャンネル・デジタル・エフェクト・システム960Lの登場で、にわかに脚光を浴びてきたところだ。操作性が素晴らしいだけでなく、音そのものが圧巻。

電源モジュールといえば、日本市場でも馴染の深いETA。
このAESショーでは大定番商品であるPD8とPD8Lのアップグレードが紹介されていた。
保護回路をさらに強化しただけでなく、シャシーそのものの厚さを増し加え、奥行も数cm伸びてより頑丈な電源モジュールとなったのに価格は据え置き。

正に今の時代、グレードアップで値下げ無しはもう当たり前のようだ。(でも嬉しい)
マイクのメーカーとして世界的に急成長しているのがAUDIX。
圧倒的シェアを誇るSHURE社に対して、手ごわいプレッシャーを与える可能性を秘めている唯一のメーカーかもしれない。
ダイナミックマイクのOMシリーズは既に世界的に普及しており、58を追いかけている。
楽器用のDシリーズはSM57を視野に入れたマーケティングを展開している。

この度Dシリーズを3本買うとハードケースが無償でつくキャンペーンが始まるらしい。
Dシリーズ4本の他、ドラム用グースネック、筒型コンデンサーも2本入るケースで、これは面白いキャンペーンだ。
サブウーハーの巨匠、サーウィンスキー氏の率いるCerwin Vegaはデモルームで16ヶのスピーカーを用いた16TRバーチャルステージ音響を見せ付けてくれた。
さすがに16ヶもスピーカーが各特性を活かして配置されると、目をつぶって聞き入るならばステージの真ん前に座っていると思いこんでしまうに違いない。

今年もAESは私達を大いに楽しませてくれた。
素晴らしいサウンド、音楽、そしてそれを可能にする機材群、やっぱり人生に音は欠かせない。


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